ー酸の質とコクの視点からー
抽出条件を考えるうえで、「この豆はどんな方向に動かしやすいのか」を把握しておくことはとても重要です。
本記事では、主要なコーヒー生産地域の味わいの傾向を、酸の質とコクの二軸で整理してみます。
ここで示すマッピングは、良し悪しを決めるものではありません。
あくまで**抽出調整を考えるための整理図(仮設定)**として捉えてください。
なぜ「酸味 vs 苦味」ではなく「酸の質」なのか
コーヒーの味わいを図示する際、
「酸味 − 苦味」の一軸、もしくは二項対立で表現されることがよくあります。
しかし実際の抽出設計では、
- 酸があるか/ないか
よりも - その酸がどんな質で感じられるか
の方が、調整の指針として有効な場面が多くあります。
例えば、
- 明るく立ち上がる酸
- 丸く、後半に残る酸
- 輪郭はあるが主張しすぎない酸
といった違いは、
挽き目・湯温・初期流速・抽出率の設計に直接関係します。
そこで本記事では、
- 横軸:酸の質(−5 〜 +5)
- マイナス側:鈍く、落ち着いた印象
- プラス側:明るく、シャープな印象
- 縦軸:コク(−5 〜 +5)
- マイナス側:軽く、透明感のあるボディ
- プラス側:重く、厚みのあるボディ
という二軸で整理します。
産地別・味わいマッピング(仮設定)
以下は、代表的な生産地域について、
一般的に知られている傾向をもとに仮スコアを与えたものです。
※ 豆の系統、精製方法、焙煎度によって大きく変動します。

※ スコアは「振れ幅」を意識して設定しています。
良し悪しの評価ではありません。
右上・左下が少ない理由
このマッピングを見ると、
- 酸の質が高く、かつコクも非常に強い(右上)
- 酸の質が低く、かつコクも非常に軽い(左下)
といった領域に、自然由来の豆があまり存在しないことに気づきます。
これは、
- 栽培環境
- 品種特性
- 生理的な成分バランス
の制約により、
自然状態では両立しにくい組み合わせだからです。
もしこれらの領域を狙う場合は、
- 焙煎による設計
- ブレンド
- 抽出操作による意図的な寄せ
が必要になります。
つまり、このマップは
「豆の素性が決めている初期位置」
を示していると考えると分かりやすいでしょう。
このマップの使い方
この図の目的は、
「味を分類すること」ではありません。
- 今の位置はどこか
- どの方向に動かしたいのか
- そのために、どの操作を使うか
を考えるための座標系です。
抽出は、
豆の性格に対してどの軸をどれだけ動かすかという操作だと捉えると、
感覚ではなく、再現性のある調整として扱いやすくなります。
まとめ
- 産地ごとに、味わいの「初期位置」はある程度決まっている
- 今回は酸の有無ではなく、酸の質に注目した
- コクとの二軸で整理すると、抽出調整の方向性が見えやすい
- 右上・左下の領域は、意図的に設計しないと現れにくい
次回は、抽出について触れていきたいと思います。それではまた!


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