― 有名レシピを抽出操作として整理してみる ―
ハンドドリップコーヒーの世界で、「46メソッド」という名前を一度は聞いたことがある方も多いと思います。
数値が明確で分かりやすく、再現性が高いレシピとして広く知られています。
本記事では、46メソッドを「正解の淹れ方」として紹介するのではなく、
どのような抽出操作をしているメソッドなのかという視点で整理してみます。
粕谷哲さんについて
46メソッドを提唱したのは、2016年のWBC(World Brewers Cup)で優勝した粕谷哲さんです。
世界大会で結果を残した抽出理論という点で、46メソッドは一気に注目を集めました。
ただし本記事では、
大会での評価やメソッドの優劣については踏み込みません。
あくまで、
「このレシピは、抽出という操作をどう設計しているのか?」
を整理することを目的とします。
46メソッドとは何か
46メソッドの基本的な考え方は非常にシンプルです。
- 総湯量を100%としたとき
- 前半40%
- 後半60%
- 前半で味の方向性を作る
- 後半で濃度を調整する
一般的には、
- 前半40%を
- 1投目の湯量を多く → 酸寄り
- 1投目の湯量を少なく → 甘み寄り
- 後半60%を
- 1回で注ぐ → 薄め
- 分けて注ぐ → 濃いめ(分ける回数が多いほど濃い)
と説明されることが多いでしょう。
数字ではなく「役割」で見る
46メソッドをそのまま数字で覚えると、
- なぜ40なのか?
- なぜ60なのか?
- 量が変わったらどうするのか?
といった疑問が残ります。
そこで一度、数字を忘れて役割で整理してみます。
抽出前半(40%):味を作るパート
抽出の初期では、
- 溶けやすい成分
- 揮発性の高い香気成分
- 明るく感じられやすい酸
が優先的にカップに出てきます。
46メソッドでは、この部分を意図的に切り出し、
「味の骨格を決める工程」として扱っています。
抽出後半(60%):濃度を合わせるパート
一方、抽出が進むにつれて、
- 成分の溶出速度は落ち
- 苦味や渋味寄りの成分が増え
- 全体の濃度調整が主目的になる
46メソッドでは、この後半を
前半で作った味を壊さず、濃度だけを整える工程
として位置付けています。
抽出操作として分解すると
46メソッドを「操作」として見ると、次のように整理できます。
- 抽出量を段階的に分けている
- 初期の湯量を制限している
- 抽出前半と後半で役割を分けている
つまりこれは、
- 流速
- 接触量
- 抽出時間
を一括設計しているメソッドと解釈できるのではないでしょうか。
なぜ家庭で扱いやすいのか
46メソッドが家庭で広く使われている理由は、
「簡単だから」だけではないと思っています。
- 抽出率やTDSを知らなくても考えられる
- 「前半」「後半」という感覚的な分割
- レシピを微調整しやすい
これは、
家庭では100%同じ条件を再現することは困難
という前提に立ったとき、
外しにくい設計になっているとも捉えられます。
このブログではどう扱うか
ここまで見てきたように、46メソッドは、
- 明確な思想があり
- 操作としても分解しやすい
非常に良い題材です。
一方で、
- 40%と60%は本当に最適なのか?
- 豆の性格が変わっても同じで良いのか?
- 挽き目や湯温が変わったらどうなるのか?
といった点は、
実験とデータで検証する余地が大きいとも言えます。
本ブログでは、46メソッドを出発点として、
抽出条件を変えたときに何が起きているのかを
科学的・技術的に見ていく予定です。
まとめ
- 46メソッドは、多くの環境で安定した結果を得やすい、よく整理された抽出レシピ
- 抽出操作を整理するためのフレームワーク
- 前半と後半で役割を分ける設計思想がある
- 数値そのものより、抽出操作の役割分担に着目すると理解が深まる
有名なメソッドだからこそ、
一度フラットに分解して理解しておくことは意味があると考えています。
今後は、46メソッドの思想を強く意識しつつ実際の抽出条件と照らし合わせながら、
どの操作がどの成分に効いているのかを掘り下げていこうと考えています。
それではまた!
*実際の抽出実験の内容はこちら ドリップ実験


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