残液TDSという視点
— 抽出は「どこで止めたか」をどう捉えるか —
前回の記事では、
ブリューレシオと挽き目を変えた4条件について、カップTDSとpHを測定し、結果を整理しました。
今回は、その際に**副次的に測定した「残液のTDS」**について掘り下げます。
一般的な抽出評価では、
カップ側のTDSや収率が主に扱われますが、
今回は抽出を2分30秒で意図的に打ち切ったこともあり、
「ドリッパー内に残っていた液体は、どんな状態だったのか?」
が気になり、別皿で受けてTDSを測定しました。
この「残液TDS」は、少なくとも筆者の知る限りでは
一般的に確立された指標ではなく、
今回の実験における独自の観測値になります。
実験条件とデータ(再掲)
| 水準 | Brew ratio | ミルクリック数 | カップTDS | 残液TDS |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 15 | 18 | 1.76% | 0.76% |
| 2 | 18 | 24 | 1.46% | 0.86% |
| 3 | 15 | 24 | 1.57% | 0.96% |
| 4 | 18 | 18 | 1.60% | 0.69% |
注目したいのは、
- カップTDSが近い条件同士でも
- 残液TDSには明確な差が出ている
という点です。
特に、
- 粗め × 低BR(No.3)
- 細かめ × 高BR(No.4)
は、カップTDSが近いにも関わらず、
残液TDSが大きく異なっています。
残液TDSは「移動効率」ではなく「抽出段階」を示している
最初は、
- 粗い挽き目では成分が残りやすい
- 細かい挽き目ではカップ側に移りやすい
といった解釈も考えましたが、
今回の条件を踏まえると、少し違う見方の方が自然だと感じています。
粗い挽き目 × 低BRの場合
この条件では、
- 粒子が大きく、抽出速度が遅い
- 投入水量が少ない
- 抽出はまだ進行中の状態で2分30秒で打ち切られている
と考えられます。
つまり、
「まだ比較的濃い成分が溶け出し続けている液体」
がドリッパー内に残っていた、という状態です。
その結果、
- 残液TDSは高めになる
- ただしカップTDSよりは低い
という、今回のデータと整合します。
ここからさらに抽出を続けたとしても、
残液は次第に薄くなっていくため、
- 「もう少し取れば良くなる」
というより、 - 抽出の後半フェーズに入っている
と考えるのが妥当だと思います。
細かい挽き目 × 高BRの場合
一方でこの条件では、
- 粒子が細かく、抽出速度が速い
- 水量が多く、抽出は早期に進行する
結果として、2分30秒時点ではすでに、
抽出そのものはほぼ完了しており、
その後は薄めるフェーズに入っている
状態だったと解釈できます。
そのため、
- 残液TDSは低く
- 落ち切りまで続けても、希釈に近い挙動になる
という結果になったと考えられます。
過抽出だが、苦く感じにくい?
この視点に立つと、
細かい挽き目 × 高BRは「過抽出だが、薄められている」
という解釈が成り立ちます。
- 抽出は進み切っている(=過抽出)
- しかし同時に水量が多く、TDSは抑えられている
- 結果として、苦味や渋みが相対的に感じにくくなる
「過抽出=必ず苦い」という単純な図式ではなく、
抽出の進行と希釈が同時に起きている
という見方の方が、今回の感覚評価とも一致します。
残液TDSが示しているもの
今回の残液TDSは、
- 味の良し悪し
- 抽出の成否
を直接評価する指標ではありません。
しかし、
「抽出がどのフェーズで止められたか」
を推測するための、
補助的な観測値としては、かなり示唆に富んでいると感じています。
同じようなカップTDSでも、
- 抽出途中で止めたのか
- 抽出後半まで進めたのか
によって、
ドリッパー内に残る液体の状態は大きく異なる。
その差が、今回のデータでは
数値としてはっきり表れた点が、
この測定を行った一番の収穫でした。
今後について
今回はあくまで仮説的な整理です。
- 抽出時間を変えた場合
- 落ち切りまで続けた場合
- 温度を下げた場合
など、条件を変えることで
残液TDSの意味合いも変わってくるはずです。
次回以降は、
今回の結果を踏まえた追加実験や、
抽出設計との関係についても考えていきたいと思います。
それではまた!
考察対象の実験データはこちら 抽出実験① ~ブリューレシオと挽き目の影響~
測定項目についてはこちらを参照↓
TDS(Total Dissolved Solids)とは、pH(Potential Hydrogen)とは
使用した器具についてはこちらを参照↓


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