抽出実験①の追加考察

ドリップ実験

残液TDSという視点

— 抽出は「どこで止めたか」をどう捉えるか —

前回の記事では、
ブリューレシオと挽き目を変えた4条件について、カップTDSとpHを測定し、結果を整理しました。

今回は、その際に**副次的に測定した「残液のTDS」**について掘り下げます。

一般的な抽出評価では、
カップ側のTDSや収率が主に扱われますが、
今回は抽出を2分30秒で意図的に打ち切ったこともあり、

「ドリッパー内に残っていた液体は、どんな状態だったのか?」

が気になり、別皿で受けてTDSを測定しました。

この「残液TDS」は、少なくとも筆者の知る限りでは
一般的に確立された指標ではなく、
今回の実験における独自の観測値になります。


実験条件とデータ(再掲)

水準Brew ratioミルクリック数カップTDS残液TDS
115181.76%0.76%
218241.46%0.86%
315241.57%0.96%
418181.60%0.69%

注目したいのは、

  • カップTDSが近い条件同士でも
  • 残液TDSには明確な差が出ている

という点です。

特に、

  • 粗め × 低BR(No.3)
  • 細かめ × 高BR(No.4)

は、カップTDSが近いにも関わらず、
残液TDSが大きく異なっています。


残液TDSは「移動効率」ではなく「抽出段階」を示している

最初は、

  • 粗い挽き目では成分が残りやすい
  • 細かい挽き目ではカップ側に移りやすい

といった解釈も考えましたが、
今回の条件を踏まえると、少し違う見方の方が自然だと感じています。

粗い挽き目 × 低BRの場合

この条件では、

  • 粒子が大きく、抽出速度が遅い
  • 投入水量が少ない
  • 抽出はまだ進行中の状態で2分30秒で打ち切られている

と考えられます。

つまり、

「まだ比較的濃い成分が溶け出し続けている液体」

がドリッパー内に残っていた、という状態です。

その結果、

  • 残液TDSは高めになる
  • ただしカップTDSよりは低い

という、今回のデータと整合します。

ここからさらに抽出を続けたとしても、
残液は次第に薄くなっていくため、

  • 「もう少し取れば良くなる」
    というより、
  • 抽出の後半フェーズに入っている

と考えるのが妥当だと思います。


細かい挽き目 × 高BRの場合

一方でこの条件では、

  • 粒子が細かく、抽出速度が速い
  • 水量が多く、抽出は早期に進行する

結果として、2分30秒時点ではすでに、

抽出そのものはほぼ完了しており、
その後は薄めるフェーズに入っている

状態だったと解釈できます。

そのため、

  • 残液TDSは低く
  • 落ち切りまで続けても、希釈に近い挙動になる

という結果になったと考えられます。


過抽出だが、苦く感じにくい?

この視点に立つと、

細かい挽き目 × 高BRは「過抽出だが、薄められている」

という解釈が成り立ちます。

  • 抽出は進み切っている(=過抽出)
  • しかし同時に水量が多く、TDSは抑えられている
  • 結果として、苦味や渋みが相対的に感じにくくなる

「過抽出=必ず苦い」という単純な図式ではなく、
抽出の進行と希釈が同時に起きている
という見方の方が、今回の感覚評価とも一致します。


残液TDSが示しているもの

今回の残液TDSは、

  • 味の良し悪し
  • 抽出の成否

を直接評価する指標ではありません。

しかし、

「抽出がどのフェーズで止められたか」

を推測するための、
補助的な観測値としては、かなり示唆に富んでいると感じています。

同じようなカップTDSでも、

  • 抽出途中で止めたのか
  • 抽出後半まで進めたのか

によって、
ドリッパー内に残る液体の状態は大きく異なる。

その差が、今回のデータでは
数値としてはっきり表れた点が、
この測定を行った一番の収穫でした。


今後について

今回はあくまで仮説的な整理です。

  • 抽出時間を変えた場合
  • 落ち切りまで続けた場合
  • 温度を下げた場合

など、条件を変えることで
残液TDSの意味合いも変わってくるはずです。

次回以降は、
今回の結果を踏まえた追加実験や、
抽出設計との関係についても考えていきたいと思います。

それではまた!

考察対象の実験データはこちら 抽出実験① ~ブリューレシオと挽き目の影響~

測定項目についてはこちらを参照↓

TDS(Total Dissolved Solids)とはpH(Potential Hydrogen)とは

使用した器具についてはこちらを参照↓

使用器具・抽出環境計測器具・測定環境

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