TDSとは何か ― コーヒーを「濃さ」で捉えるための指標
コーヒーの味を語るとき、
「酸味」「苦味」「コク」「香り」といった言葉がよく使われます。
一方で、本ブログではそれらを感覚だけでなく、数値と操作条件の関係として捉えることを目的としています。
その中で、避けて通れない指標が TDS(Total Dissolved Solids) です。
今回は、TDSとは何か、何を表していて、何を表していないのかを整理します。
抽出レシピ論や味評価に踏み込む前の、あくまで「道具としてのTDS」の話です。
TDSとは何を測っているのか
TDSは 溶存固形分濃度 を意味します。
コーヒーの場合、
抽出液中に溶け込んでいる成分の割合(質量比)
を示す指標です。
一般的には %表示 で示され、
例えば TDS = 1.40% であれば、
- 抽出液100g中に
- 約1.4gの溶解成分が含まれている
という意味になります。
ここで重要なのは、
- どの成分が溶けているか
- 味としてどう感じるか
は、TDSそのものからは直接わからない、という点です。
TDSはあくまで「量」の指標です。
なぜコーヒーでTDSが使われるのか
コーヒー抽出は、
- 固体(粉)
- 液体(水)
- 時間
が関与するプロセスです。
このとき、
- 抽出時間
- 挽き目
- ブリューレシオ
- 温度
といった条件を変えると、
どれだけの成分が液中に移動したか が変わります。
TDSは、
- 抽出が進んだか、進んでいないか
- 濃いか、薄いか
を再現性をもって比較するための最小単位の指標として非常に便利です。
味覚評価だけでは、
- 今日は濃く感じた
- 今日は薄い気がする
で終わってしまうところを、
- 数値として残す
- 条件との関係を整理する
ことができます。
TDSはどうやって測られているか
家庭用・業務用を問わず、
コーヒー用TDS計の多くは 屈折率測定 を用いています。
屈折率との関係
液体中に溶質が増えると、光の屈折率が変化します。
この屈折率を測定し、
屈折率 → 濃度(TDS)
へ変換しています。
ここで注意点があります。
- コーヒーは単一成分溶液ではない
- 溶けている成分の組成は一定ではない
つまり、
TDS = 屈折率からの換算値であり、厳密な物理定数ではない
ということです。
換算式はブラックボックスなのか
結論から言うと、
実用上はブラックボックスとして扱うのが妥当
です。
メーカーごとに補正式や係数は異なり、
またそれらは一般に公開されていません。
ただし重要なのは、
- 絶対値の厳密さより
- 同一条件・同一機器内での相対比較
です。
この点において、TDSは非常に安定した指標です。
TDSが教えてくれること/教えてくれないこと
教えてくれること
- 抽出液の「濃さ」
- 条件変更による抽出量の増減
- 再現性の有無
教えてくれないこと
- 美味しさ
- 良し悪し
- 酸味・苦味・甘みの内訳
- どの成分が多いか
TDSが高い=美味しい
TDSが低い=不味い
ではありません。
あくまで、
抽出という操作の結果を、数値で把握するための軸
です。
飲料として見たときのTDS
TDSという概念は、コーヒー特有のものではありません。
- ジュース
- スープ
- インスタント飲料
- アルコール飲料
など、溶液である限りTDSは定義できます。
TDSを「味の代替指標」と誤解しないためにも、
まずは指標単体としての性質を理解しておくことが重要だと考えています。
まとめ
- TDSは抽出液中の溶存成分量を示す指標
- 味そのものを表す数値ではない
- 抽出条件と結果を結びつけるための道具
- 屈折率から換算された実用指標であり、相対比較が本質
- 抽出を定量的に扱うための「共通言語」
このTDSを用いて 抽出条件の違いが何を変えているのか を、
実験結果とともに見ていきます。
それではまた!
本記事で使用している器具についてはこちらを参照 計測器具・測定環境
TDSについてのさらなる詳細はこちらを参照↓


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