pHとは何か ― コーヒーの「酸」を数値でどう捉えるか
コーヒーの味を語るとき、「酸味」という言葉は頻繁に使われます。
しかしこの酸味は、単純に「酸っぱいかどうか」では語れません。
- 明るい酸
- 丸い酸
- 刺さる酸
- 熟した果実のような酸
こうした表現が生まれる背景には、
酸の量だけでなく、質やバランスが関わっています。
その中で、定量指標としてよく挙げられるのが pH です。
今回は、pHが何を示し、何を示さないのかを整理します。
pHとは何を表す指標か
pHは、溶液中の 水素イオン濃度(H⁺) を対数で表した指標です。
- pH 7:中性
- pH < 7:酸性
- pH > 7:アルカリ性
数値が1変わるごとに、
水素イオン濃度は 10倍 変化します。
つまり、pHは
「酸の強さ」を示す指標
であり、
酸の量(総量)を直接示すものではありません。
コーヒーのpHはどのくらいか
一般的なドリップコーヒーのpHは、
- おおよそ pH 4.8〜5.5
に収まることが多いとされています。
これは、
- レモン果汁(pH 2前後)よりはかなり穏やか
- ワイン(pH 3〜4)よりは弱い
という位置づけです。
それでも「酸味」をはっきり感じるのは、
人間の味覚が pHの絶対値ではなく変化やバランスに敏感だからです。
pHが教えてくれること
pH測定から読み取れるのは、主に次の点です。
- 抽出液の酸性の度合い
- 条件変更による酸性度の変化
- 抽出の進行度合いの一側面
例えば、
- 抽出が浅い → pHが高め
- 抽出が進む → pHが下がる傾向
は、比較的一般的な挙動です。
pHが教えてくれないこと
一方で、pHからは次のことはわかりません。
- 酸の「種類」
- 酸味の心地よさ
- フルーティかシャープか
- 甘みとのバランス
同じpHでも、
- リンゴ酸主体
- クエン酸主体
- 酢酸が目立つ
では、味の印象は大きく異なります。
つまり、
pHは「酸味の質」を直接表す指標ではない
という点が重要です。
TDSとの違いと関係
TDSとpHは、しばしば並べて語られますが、
測っているものは全く異なります。
| 指標 | 何を見ているか |
|---|---|
| TDS | 溶けている成分の総量 |
| pH | 酸の強さ(H⁺濃度) |
実際の抽出では、
- TDSが高いがpHはあまり変わらない
- pHが下がってもTDSはほぼ同じ
といったケースも普通に起こります。
このズレこそが、
数値だけでは味は語れない
という事実を示しています。
飲料としてのpHを見るという視点
pHはコーヒーだけでなく、
多くの飲料で重要な意味を持ちます。
- 清涼飲料水
- スポーツドリンク
- アルコール飲料
これらでは、
- 味
- 保存性
- 口腔刺激
とpHが密接に関係しています。
コーヒーにおいても、
「酸味がある/ない」ではなく、
どの位置にpHがあり、どのように感じられるか
という視点を持つことで、
抽出条件の議論が整理しやすくなります。
まとめ
- pHは酸の「強さ」を示す指標
- 酸の量や質を直接表すものではない
- 抽出条件による変化を見るには有効
- 味の評価を数値に置き換える指標ではない
- TDSと組み合わせて初めて意味を持つ場面が多い
pHは万能な評価軸ではありませんが、
抽出という現象を多面的に捉えるための重要な一軸です。
これらの指標を実際の抽出実験とどう結びつけて考えるかを掘り下げていきます。
それではまた!
本記事で使用している器具についてはこちらを参照 計測器具・測定環境


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