Tds測定方式の整理と屈折率方式の位置づけ
この記事では、コーヒー抽出を定量的に扱ううえで頻繁に登場する TDS(Total Dissolved Solids) について、
- そもそもTDSとは何を測っている指標なのか
- TDSの測定方式にはどんな種類があるのか
- それぞれの方式で「できること/できないこと」
を整理します。
後半では、家庭用・コーヒー用途で最も使われている 屈折率方式 にフォーカスし、 なぜこの方式が使われているのか、どこまで信頼してよいのかを少し踏み込んで考えてみます。
TDSとは何か(おさらい)
TDS(Total Dissolved Solids)は「溶解性固形分濃度」を表す指標です。
コーヒーの場合、
- 有機酸
- 糖類
- カフェイン
- フェノール類
- ミネラル成分
など、水に溶け込んだ非揮発性成分の総量をまとめて扱った値になります。
重要なのは、
TDSは“何が溶けているか”ではなく、“どれくらい溶けているか”を見る指標
だという点です。
味や香りの正体を直接示すものではありませんが、 抽出条件を変えたときの「量的な変化」を追うには非常に扱いやすい指標です。
TDSの主な測定方式
TDSの測定方法はいくつか存在します。食品分野を中心に整理すると、主に以下の方式があります。
1. 乾燥重量法(重量分析)
原理
一定量の試料を乾燥させ、水分を蒸発させた後に残った質量を測定します。
特徴
- 原理が非常にシンプル
- 「溶けていた固形分の総量」を直接測っている
限界
- 沸点の低い揮発性成分は測定対象にならない
- 乾燥条件(温度・時間)によって結果が変わる
- 手間と時間がかかる
主な用途
- 食品分析(糖度、エキス分)
- 公的試験・基準分析
コーヒー分析の基準として使われることはありますが、 日常的な抽出評価には向いていません。
2. 電気伝導度方式
原理
溶液中のイオン濃度を電気伝導度として測定します。
特徴
- ミネラル分に敏感
- 水質評価では非常に有効
限界
- 有機物(糖や酸)はほとんど反映されない
- コーヒーのTDS評価には不向き
主な用途
- 水道水・工業用水の管理
- 環境分析
コーヒー用途では、 「抽出液」よりも「抽出に使う水」の評価に使われることが多い方式です。
3. 屈折率方式(コーヒーで主流)
原理
溶液中の溶質量に応じて変化する屈折率を測定し、 あらかじめ設定された換算式からTDSを算出します。
特徴
- 少量の試料で測定可能
- 測定が速い
- 再現性が高い
限界
- 成分組成が変わると誤差が出る可能性
- TDSは換算値であり、直接測定ではない
主な用途
- コーヒー抽出評価
- 飲料(糖度計など)
現在、コーヒー分野で使われているTDS計のほぼすべてが、この屈折率方式です。
なぜコーヒーでは屈折率方式が使われるのか
理由はシンプルです。
- 速い
- 再現性が高い
- 比較実験に向いている
抽出条件を振ったときに重要なのは、
絶対値の厳密さよりも、条件間の差を安定して捉えられること
です。
屈折率方式は、
- 同じ豆
- 同じ焙煎
- 同じ条件範囲
であれば、非常に安定した比較指標として機能します。
屈折率方式で「できること」「できないこと」
できること
- 抽出条件変更による溶出量の増減を追う
- レシピ間の定量比較
- 抽出の再現性評価
できないこと
- 香り成分の評価
- 味の質的違いの直接評価
- 成分組成の違いの特定
屈折率計が捉えているのは、あくまで溶質総量に近い挙動です。
そのため、
- 同じTDSでも味が違う
- 苦味が強く感じる/感じにくい
といった現象は普通に起こります。
揮発成分とTDSの関係について
コーヒーの香気成分の多くは揮発性が高く、分子量も小さいため、
- 乾燥重量法では検出されない
- 屈折率にもほとんど寄与しない
という性質を持ちます。
つまり、
TDSは香りをほぼ見ていない指標
と言って差し支えありません。
これはTDSの欠点というより、 役割分担の問題です。
まとめ
- TDSには複数の測定方式が存在する
- コーヒー用途では屈折率方式が最も現実的
- 屈折率方式は「比較」に非常に強い
- 香りや質感はTDSの守備範囲外
TDSは万能な指標ではありませんが、 抽出条件を科学的に扱うための強力な物差しであることは間違いありません。
次の記事では、屈折率方式そのものについて、 もう一段踏み込んだ整理をしてみようと思います。
それではまた!
他のTDSに関する記事はこちらを参照↓
TDS(Total Dissolved Solids)とは、TDSについて深堀り②
本記事で使用している器具についてはこちらを参照 計測器具・測定環境


コメント