TDSについて深堀り②

計測について

屈折率方式TDS計について

この記事では、コーヒー抽出評価で広く使われている 屈折率方式TDS計 について、

  • 屈折率方式とは何を測る原理なのか
  • 装置としてどのように実装されているのか
  • 校正(キャリブレーション)をどう考え、どう扱うべきか

という3点に絞って整理します。

TDSという指標の一般論や、他方式(乾燥重量法・電気伝導度法など)との比較は扱いません。 本記事はあくまで、屈折率方式そのものを理解して使うための整理です。


屈折率方式とは何を測っているのか

屈折率方式TDS計が直接測定しているのは、名前の通り 屈折率 です。

屈折率は、光が物質中を進むときの速度変化を表す物性値で、 溶液中に溶けている物質量が増えると、一般に屈折率は増加します。

コーヒー抽出液では、

  • 糖類
  • 有機酸
  • カフェイン
  • フェノール類
  • 無機塩類

といった 水に溶けた非揮発性成分の総体 が、 分離されることなく「まとめて」屈折率変化として現れます。

重要なのは、

屈折率方式は成分分析ではなく、溶液全体の光学的応答を見ている

という点です。

TDS値は、その屈折率をもとに換算された 派生指標 であり、 屈折率そのものが一次情報になります。


測定原理:臨界角法

コーヒー用屈折率計の多くは 臨界角法 を採用しています。

原理は比較的シンプルです。

  1. 高屈折率のプリズム内部から、試料側に向けて光を入射
  2. 試料の屈折率に応じて、全反射と屈折の境界角(臨界角)が変化
  3. その境界位置を受光素子で検出
  4. 臨界角から屈折率を算出

この方式の特徴は、

  • 光路が短く安定している
  • 少量試料で測定できる
  • 濁りや微粒子の影響を受けにくい

といった点にあります。


装置としての構成

一般的な屈折率方式TDS計は、以下の要素で構成されています。

  • 単色LED光源(可視〜近赤外)
  • 高屈折率プリズム
  • 受光素子(フォトダイオード等)
  • 温度センサ
  • 演算回路(マイコン)

ユーザーが操作しているのは「TDS計」ですが、 装置内部では

光学測定 → 屈折率算出 → 換算式によるTDS表示

という処理が行われています。


波長依存性と換算の前提

屈折率は 測定波長に依存 する物性値です。

  • 古典的な屈折率定義:589 nm(ナトリウムD線)
  • デジタル屈折率計:装置固有のLED波長

コーヒー用TDS計では、

特定波長 × コーヒー抽出液

という前提条件で校正・換算が行われています。

そのため、

  • 機種が異なる
  • 換算ロジックが異なる

場合に、TDS値を厳密に比較する意味は限定的です。


校正(キャリブレーション)の考え方

屈折率方式TDS計では、校正の扱い方が非常に重要になります。

ゼロ校正(水校正)

多くの機器では、 蒸留水・精製水による ゼロ校正 が基本です。

留意点としては、

  • 校正水と測定試料の温度差をできるだけ小さくする
  • プリズム表面の汚れ・油分を完全に除去する
  • 気泡が付着していないことを確認する

といった点が挙げられます。

ATC(自動温度補正)があるからといって、 温度差を無視してよいわけではありません。


標準液校正の位置づけ

一部の屈折率計では、 スクロース溶液などの 既知濃度標準液 による校正が可能です。

ただし、

  • スクロース溶液とコーヒー抽出液では成分組成が異なる
  • 屈折率への寄与の仕方も異なる

という前提があります。

したがって、

標準液校正は装置の健全性確認には有効だが、 コーヒーTDSの絶対値を保証するものではない

と捉えるのが妥当です。


校正頻度と実験での扱い

実験用途では、

  • 測定前に必ずゼロ校正
  • 室温変化や長時間測定では途中再校正

を基本とするのが無難です。

重要なのは、

同一装置・同一校正手順・同一環境で比較する

という一貫性です。


まとめ

  • 屈折率方式TDS計は、光学的に屈折率を測る装置
  • TDSは屈折率から換算された比較指標
  • 波長・温度・校正条件が測定値に強く影響する
  • 校正は「真値」よりも「比較の一貫性」を重視すべき

屈折率方式TDS計は、 原理と前提条件を理解したうえで使うことで、 コーヒー抽出を定量的に扱うための信頼できる道具になります。

それではまた!

他のTDSに関する記事はこちらを参照↓

 TDS(Total Dissolved Solids)とはTDSについて深堀り①

本記事で使用している器具についてはこちらを参照 計測器具・測定環境

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