豆の違いはTDSとpHにどう現れるか
— 抽出条件固定下での豆比較 —
これまでの記事では、
同一の豆を用いて
- Brew ratio
- 挽き目
- 抽出温度
といった操作因子が、TDS・pH・残液TDSにどう影響するかを見てきました。
今回は視点を変え、豆そのものを変えた場合に、これらの指標がどう変化するかを確認します。
実験の位置づけ
今回追加したのは、以下の1条件です。
- エチオピア イルガチェフェG1 アリーチャ
やや淡い色合いで挽いている時点から爽やかな柑橘系の香りが漂ってきます。
産地の特徴がよく表れていそうです。
なお、これまでと同様に、
- 抽出は 2分30秒で意図的に打ち切り
- 落ち切りまでは取らない
という設計です。
したがって本記事でも、
- 絶対的な良し悪し
- 最適抽出条件
を議論するのではなく、
同一系内での相対的な違いを観察する、という立場を取ります。
*実験自体は抽出実験②を行った後に連続的に実施しています。
実験条件(概要)
環境条件
- 室温:20.9 ℃
- 湿度:46 %RH
共通条件
- ミル:TIMEMORE C2
- ドリッパー:HARIO V60
- ドリップ手順:5回投入
- 各30秒
- 抽出時間:2分30秒
変数
- Brew ratio:15 / 18
- ミルクリック数:18 / 24
- 抽出温度:83 ℃ / 93 ℃
- 豆の種類
実験結果(カップ側)
| 水準No. | 豆 | 豆量 (g) | Brew ratio | クリック数 | 温度 (℃) | TDS (%) | 屈折率 | pH |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | クリスマスブレンド | 12 | 15 | 24 | 93 | 1.48 | 1.33559 | 5.04 |
| 2 | クリスマスブレンド | 12 | 15 | 24 | 83 | 1.42 | 1.33549 | 5.13 |
| 3 | クリスマスブレンド | 12 | 15 | 18 | 83 | 1.67 | 1.33544 | 5.13 |
| 4 | クリスマスブレンド | 12 | 18 | 18 | 83 | 1.44 | 1.33554 | 5.11 |
| 5 | クリスマスブレンド | 12 | 15 | 18 | 93 | 1.71 | 1.33601 | 5.02 |
| 6 | エチオピア イルガチェフェG1 アリーチャ | 20 | 15 | 18 | 93 | 1.94 | 1.33642 | 4.29 |
まず目につく点
水準6(エチオピア)のデータは、これまでのクリスマスブレンドと比べて、
- TDSが高い
- pHが明確に低い
という特徴を示しています。
官能的にも「酸味がはっきりと感じられる」タイプの豆であり、
pHが低い値を示している点は、感覚とよく一致しています。
一方で、TDSについては、
- 数値としては高い
- しかし「濃い」と感じる印象とは必ずしも一致しない
という、これまでの記事でも触れてきた傾向が、
豆が変わっても同様に見られます。
抽出完了後の残液TDS
| 水準No. | 豆 | 豆量 (g) | 残液TDS (%) | 屈折率 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | クリスマスブレンド | 12 | 0.85 | 1.33449 |
| 2 | クリスマスブレンド | 12 | 0.89 | 1.33456 |
| 3 | クリスマスブレンド | 12 | 0.81 | 1.33443 |
| 4 | クリスマスブレンド | 12 | 0.70 | 1.33427 |
| 5 | クリスマスブレンド | 12 | 0.84 | 1.33447 |
| 6 | エチオピア イルガチェフェG1 アリーチャ | 20 | 1.15 | 1.33502 |
ここでさらに興味深いのが、残液TDSです。
エチオピア(No.6)は、
- カップTDSが高い
- 残液TDSも明確に高い
という結果になっています。
データから考えられること(仮説)
今回の結果から、少なくとも以下のことは言えそうです。
pHについて
- 酸味が明確な豆では、pHが低く出る
- pHは「酸の質」までは示さないが、「酸の強さ」の違いは確かに捉えている
これは、pHという指標の性質と素直に整合します。
TDSと残液TDSについて
エチオピアの残液TDSが高いことについては、
以下のような解釈が考えられます。
- 浅煎り寄りの豆は、抽出速度が遅い
- 今回は 2分30秒で抽出を打ち切っている
- その時点でも、まだ比較的濃い抽出フェーズにあった
結果として、
- カップ側にも高めのTDSが出ている
- 同時に、ドリッパー内に残った液体も濃い
という状態になっていた可能性があります。
つまり、
今回の条件では、
エチオピア豆は「抽出途中で止められた」度合いが
クリスマスブレンドより大きかった
と見るのが自然です。
これは、
- 残液TDSが「収率を直接示す指標ではない」
- しかし「抽出がどのフェーズで止まったか」を示す補助情報にはなり得る
という、これまでの記事で述べてきた考え方とも一致します。
まとめ
今回、豆を変えた実験から得られた整理は以下の通りです。
- 酸味がはっきりした豆では、pHは明確に低い値を示す
- pHは官能的な酸味の強さと、方向性としては一致する
- TDSは「濃さの感覚」と必ずしも一致しない
- 残液TDSが高いことは、抽出が途中段階で止められた可能性を示唆する
- 豆の性質によって、同じ抽出条件でも「抽出の進み方」は大きく異なる
豆の違いによる影響がとても大きそうなので、今後はマッピングの位置づけも意識しながら豆違いの評価も行っていきたいと思います。
それではまた!
計測項目に関する内容はこちらを参照 計測について


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