— 計測法に関する検証と過去の実験結果の信頼性 —
これまで複数回の抽出実験を行う中で、気になっていた点があります。
それは、
一般に「適正範囲」とされる
TDS 1.15〜1.35%
を明らかに超える値が、繰り返し測定されている
という事実です。
抽出条件を見直す前に、
まず計測法の妥当性について検証しました。
この企画でTDS計を初めて使うし測定法の教育も受けていない身なので、
自分なりに誤差を生みそうな要素をピックアップしてその影響度について確認してみました。
今回はその確認のために、
TDS計の挙動と測定条件依存性を集中的に検証しました。
この実験を行ったきっかけ
これまでの実験では、
いずれの抽出条件でもTDSが1.4~2.0の範囲の値が出ていました。
「抽出が本当に過剰なのか?」
それとも
「TDS計の使い方・前提条件に問題があるのか?」
これを切り分けない限り、
以降の議論がすべて不安定になります。
そこで今回は、
- 計測水の違い
- サンプル量の違い
- 測定時温度の影響
- 再現性
に注目して、TDS計の挙動を確認しました。
実験条件
環境条件
- 室温:20.5 ℃
- 湿度:48 %RH
共通条件
- 豆:エチオピア イルガチェフェ G1 アリー チャ
- 豆量:10 g
- ミル:TIMEMORE C2
- ドリッパー:HARIO V60
- 抽出手順:5回投入(各30秒)
- 抽出終了:2分30秒
変数
- Brew ratio:15
- ミルクリック数:18
- 抽出温度:93 ℃
実験内容①:計測水の影響確認
これまでTDS計の校正・測定には飲料水を用いていましたが、
今回は 精製水で校正 → 飲料水を測定 という形で比較しました。

結果
- 屈折率は一致
- 表示TDS値も差なし
👉 校正水の違いは今回の高TDS値の原因ではない
| 実験水準 | サンプル重量 (g) | 測定液 | 屈折率 | TDS (%) |
|---|---|---|---|---|
| 校正 | 1.00 | 精製水 | 1.33299 | ー |
| 1 | 0.32 | 精製水 | 1.33299 | 0.00 |
| 2 | 0.54 | 精製水 | 1.33299 | 0.00 |
| 3 | 0.75 | 精製水 | 1.33299 | 0.00 |
| 4 | 0.35 | 熊野古道水 | 1.33299 | 0.00 |
| 5 | 0.58 | 熊野古道水 | 1.33299 | 0.00 |
| 6 | 0.70 | 熊野古道水 | 1.33299 | 0.00 |
実験内容②:サンプル量依存性の確認
次に、測定サンプル量の影響を確認しました。
通常より高精度な 0.01 g分解能のスケールを用い、
TDS計ごと秤量して測定しています。

*~500gなのでドリップには使いにくい。
カップ側測定結果
| サンプル重量 (g) | 温度 (℃) | 屈折率 | TDS (%) |
|---|---|---|---|
| 0.42 | 24.0 | 1.33613 | 1.77 |
| 0.42 | 23.5 | 1.33610 | 1.76 |
| 0.42 | 22.7 | 1.33609 | 1.75 |
| 0.75 | 22.0 | 1.33614 | 1.78 |
| 1.01 | 21.9 | 1.33613 | 1.78 |
残液測定結果
| サンプル重量 (g) | 温度 (℃) | 屈折率 | TDS (%) |
|---|---|---|---|
| 0.58 | 24.0 | 1.33443 | 0.82 |
| 0.58 | 23.2 | 1.33445 | 0.82 |
| 0.86 | 22.6 | 1.33447 | 0.84 |
| 0.97 | 22.0 | 1.33447 | 0.84 |
結果の整理
この結果から分かることは、非常に明確です。
- 極端に少ないサンプル量では若干のばらつきは出る
- しかし、
- 0.4〜1.0 g程度の範囲では
- TDSの変動は 最大でも約0.03%程度
つまり、
普段の実験で
シビアな重量管理をする必要はない
という結論になります。

残液TDSについても、
同様の傾向・変動幅でした。
ここまでの結論
今回の検証から言えることは以下です。
- 計測水(精製水/飲料水)の違いは影響しない
- サンプル量の影響は存在するが限定的
- 観測されている高TDS値は
計測系の致命的な誤差によるものではなさそう
すなわち、
「値が高い」こと自体は、現象として受け止めてよい
という段階に来たと考えています。
今後の扱い方
TDSは絶対値よりも 相対比較 が重要な指標です。
今回の検証を踏まえ、
- サンプル量は常識的な範囲で管理
- 0.03%程度の変動幅は許容
- その前提を理解した上でデータを解釈
というスタンスで、
今後の抽出実験を進めていく予定です。
ひとまずこれまでの実験結果が計測系に依存した大きな誤りはなさそうなので、
適正とされる範囲になるよう抽出条件を調整していこうと思います。
それではまた!
TDSについてはこちらを参照 TDS(Total Dissolved Solids)とは
使用した器具についてはこちらを参照 使用器具・抽出環境、計測器具・測定環境
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