~インスタントコーヒーで、濃度が既知のコーヒーとTDSの関係を調査~
はじめに(実験の動機)
TDS(Total Dissolved Solids)という用語をそのまま受け止めると、固形物の溶解量という意味になります。
インスタントコーヒーなら固形物の溶解量が既知のコーヒーが作れます。
ということで、
TDSという指標そのものが、
実際の質量濃度とどのような関係にあるのか
を確認するため、
抽出要因の影響を排除できる インスタントコーヒー を用いた
基礎的な検証を行いました。
使用したコーヒー
本検証では、以下の製品を使用しています。
- UCC THE BLEND No.114(インスタントコーヒー)
インスタントコーヒーは、
- 完全溶解系である
- 粉体質量と湯量から質量濃度を明確に定義できる
という前提で考えると、
TDSという数値の意味合いを検証するには適した試料だと言えます。

実験①:質量濃度とTDSの関係
実験方法
以下の条件で、
粉量と湯量を変化させ、
理論的な質量濃度(質量%) と
TDS計で測定した値 を比較しました。
とりあえず、製品のラベルに書いてある推奨の粉量(2g)と湯量(140ml)、それを基準として質量濃度約1~2%の範囲で条件をふってみました。

実験結果
| 粉量 (g) | 湯量 (g) | 質量濃度 (%) | TDS (%) |
|---|---|---|---|
| 2.0 | 140 | 1.41 | 1.60 |
| 1.0 | 50 | 1.96 | 2.20 |
| 1.0 | 75 | 1.32 | 1.42 |
| 1.0 | 100 | 0.99 | 1.04 |

相関はきれいに出ますが値としては若干ずれますね。
だいたい質量濃度の1.11倍くらいになるようです。
*原点通過を制約条件とした最小二乗法で回帰線を引いています
考察
いずれの条件においても、
- TDSは質量濃度より高めの値を示す
という一貫した傾向が確認されました。
これは、
- インスタントコーヒー中の成分が
屈折率に与える影響が単純な質量比とは一致しない - TDSは「溶質量そのもの」ではなく
屈折率から換算された派生指標である
という、屈折率方式TDS計の前提と整合する結果です。
すなわち、
TDS ≒ 質量濃度
と近似的に扱うことはできるものの、
両者は本質的に一致する指標ではない
という点が、改めて数値として確認できました。
実験②:測定中の時間経過によるTDS変化
実験の概要
次に、
TDS計のプリズム上にサンプルを載せたまま、
撹拌せずに静置した状態でのTDS表示値の変化 を追跡しました。
実験結果
| 経過時間 (s) | TDS (%) |
|---|---|
| 0 | 1.04 |
| 20 | 1.06 |
| 40 | 1.13 |
| 60 | 1.16 |
| 80 | 1.23 |
| 100 | 1.25 |
| 120 | 1.33 |
| 140 | 1.35 |
| 160 | 1.38 |
| 180 | 1.47 |
| 200 | 1.49 |
| 220 | 1.56 |
| 240 | 1.58 |
| 260 | 1.66 |
| 280 | 1.69 |
| 300 | 1.78 |
| 320 | 1.80 |
| 340 | 1.88 |
| 360 | 1.96 |

さらに、420秒経過後に
プリズム上の液体を撹拌して再測定 したところ、
- TDS:1.22%
となりました。
*蒸発の影響も考えて0.01g単位で測定しながら実験していましたが、重量変化はありませんでした

時間変化の解釈
この挙動から考えられるのは、
- 静置状態では、
微細な未溶解成分や濃度勾配が
プリズム表面側に偏在していく - その結果、
見かけ上の屈折率が上昇し、
TDS表示値が時間とともに増加する
という現象では無いかと推定されます。
実際に撹拌後のTDSが初期値に近い水準まで戻ったことも、
この推定の裏付けになるかと思います。
ハンドドリップコーヒーでもこのような事象が見られるかどうかは気になるところですね。
TDS測定に対する示唆
今回の検証から、以下の点が明確になりました。
- TDSは質量濃度と強い相関はあるが一致はしない
- インスタントコーヒーでは測定時の状態(撹拌・静置・時間経過)が
表示値に大きく影響する
これは、ハンドドリップコーヒーの抽出液の測定においても
TDSという指標の解釈において重要な前提条件になりうると考えます。
まとめ
本記事では、インスタントコーヒーを用いて、
- 質量濃度とTDSの関係
- TDS計測中の時間依存挙動
を検証しました。
得られた結論は以下の通りです。
- TDSは質量濃度と強い相関はあるものの完全に合致する指標ではない
- 屈折率方式TDS計では、測定操作そのものが結果に影響し得る
TDSという指標は抽出条件の検討や再現性評価において
十分に有効なツールになり得ると考えていますが、
妄信せず測定の癖を把握した上で数値を解釈することが重要と考えます。
それではまた!
他のTDSに関する記事はこちらを参照↓
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