コーヒー豆の種類と系統

コーヒーの基礎知識

産地との関係も

― 抽出を理解するための基礎知識 ―

抽出条件を探求する前に、まず押さえておきたいのが「豆そのものの性格」です。
どれだけ丁寧にドリップしても、豆が本来持っていない要素は引き出せませんし、逆に豆の特徴を理解していれば、調整の方向性はずっと明確になります。

今回はコーヒー豆の種類と系統を整理し、味わいの違いがどこから生まれるのかを俯瞰してみます。
細かな品種解説やテイスティング論には踏み込まず、抽出を考えるための土台作りを目的とします。


コーヒー豆は大きく2種類に分けられる

私たちが飲んでいるコーヒーの原料となる豆は、主に次の2種類に分類されます。

アラビカ種(Coffea arabica)

世界のコーヒー生産量の約6〜7割を占める主流の品種です。
標高の高い地域を好み、病害に弱い一方で、香りや酸味、風味の複雑さに優れています。

ハンドドリップで楽しまれるスペシャルティコーヒーの多くは、このアラビカ種です。

ロブスタ種(Coffea canephora)

ロブスタ種は、低地・高温多湿でも育ちやすく、病害にも比較的強い品種です。
苦味が強く、カフェイン含有量が多い傾向があり、インスタントコーヒーやブレンド用として使われることが多くなっています。

本ブログでは、主にアラビカ種を対象として話を進めていきます。


「種類」と「系統」は別の話

ここで一度、用語を整理しておきます。

  • 種類:アラビカ、ロブスタ
  • 系統・品種:ティピカ、ブルボン、カトゥーラ、ゲイシャ など

アラビカ種の中にも、遺伝的な違いによってさまざまな系統や品種が存在します。
これらは突然変異や品種改良によって生まれ、それぞれ異なる特徴を持っています。


代表的なアラビカ系統

ここでは、名前を聞くことの多い系統を中心に、傾向だけを整理します。

ティピカ系

アラビカ種の原点ともいえる系統です。
全体のバランスが良く、クリーンな味わいになりやすい傾向があります。

抽出条件の変化が素直に味に現れやすく、条件検討を行う際の基準になりやすい系統です。


ブルボン系

ティピカから派生した系統で、甘みを感じやすい傾向があります。
一方で、条件によっては味の振れ幅が大きくなることもあり、抽出の影響を受けやすい系統とも言えます。


カトゥーラ・カトゥアイ

ブルボン系から派生した、比較的生産性を重視した品種です。
味の傾向は産地や精製方法による影響が大きく、一概に特徴を決めることはできません。

その分、抽出条件による変化を観察する対象としては面白い存在です。


ゲイシャ

非常に特徴的な香りで知られる系統です。
香気成分が前に出やすく、抽出条件によって印象が大きく変わります。

条件を外すと個性が出すぎる場合もあり、抽出の調整幅を考える上で興味深い系統です。


なぜ系統を知ると抽出の方向性を定めやすいか

豆の系統を知ることは、「正解のレシピ」を探すことではありません。

例えば、

  • 酸が立ちやすい傾向の豆
  • 甘みを引き出しやすい豆
  • 条件を外すと過抽出になりやすい豆

といった方向性を把握しておくことで、

次のドリップでは、どこをどう調整するか?

を考えやすくなります。

これは、抽出を感覚ではなく、再現性のある操作として捉えるための重要な視点です。

系統と生産地域の関係

コーヒー豆の味わいは、系統(遺伝的な要素)だけで決まるわけではありません。
同じ系統でも、どこで育ったかによって性格は大きく変わります。

抽出を考える上では、
「この系統だからこうなる」
ではなく、
「この系統が、この地域で育つとこうなりやすい」
という視点が重要になります。


エチオピア × 在来系統(エアルーム)

コーヒー発祥の地であるエチオピアでは、
明確に分類されていない在来種(エアルーム)が多く栽培されています。

傾向としては:

  • 華やかな香りが出やすい
  • 酸の質が明るく、立ち上がりが早い
  • 抽出初期の成分寄与が大きい

このタイプの豆では、

  • 抽出前半をどう作るか
  • 湯温や初期流速の影響

が、香りと酸の印象を大きく左右します。


中南米 × ティピカ/ブルボン系

コロンビアやグアテマラ、コスタリカなどでは、
ティピカやブルボンを祖とする系統が多く見られます。

傾向としては:

  • 酸・甘み・苦味のバランスが取りやすい
  • 抽出条件の変化に対する反応が比較的穏やか
  • 再現性の検討に向いている

このため、

  • 挽き目や抽出時間の影響
  • レシピの相似性の検討

といったテーマを扱う際の「基準豆」として適しています。


中米・南米高地 × カトゥーラ/カトゥアイ

生産性を考慮して改良された品種ですが、
高地で育つと非常にクリーンな味わいになることがあります。

傾向としては:

  • 条件が合えば透明感が出る
  • 外すとフラットになりやすい
  • 過抽出に対するマージンが狭い場合がある

抽出では、

  • 抽出時間の管理
  • 過抽出側に寄せないための調整

が重要になります。


パナマ × ゲイシャ

ゲイシャは系統として非常に個性的ですが、
それが最大限に発揮されるのは特定の地域条件が揃った場合です。

傾向としては:

  • 香気成分が支配的
  • 抽出条件による印象変化が大きい
  • 「濃くする=良くなる」ではない

ゲイシャの抽出では、

  • 成分の総量よりもバランス
  • 抽出率を抑えた設計

といった考え方が有効になります。


系統 × 地域を知ると「外してはいけない点」が見える

系統と地域の組み合わせを理解すると、

  • ここは妥協できる
  • ここは外すと一気に崩れる

というポイントが見えてきます。

これは、

家庭では100%の条件再現が難しい

という前提に立ったとき、
どこにリソースを集中すべきかを判断する材料になります。


まとめ

  • 豆の味わいは「系統 × 地域 × 精製」で決まる
  • 系統だけでなく、生産地域を見ることで傾向が見える
  • 抽出調整は「豆の性格に対する操作」として考える

次回は、こうした豆の性格に対して、
定説とされる抽出メソッド(46メソッドなど)が、どこをどう操作しているのか
定量的な視点で見ていきます。それではまた!


※コーヒーが生豆になるまでの工程については、
「コーヒーができるまで」でまとめていますのでそちらもご参照ください。 コーヒーができるまで

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